あるところに貧しい農家の男がいた。
男はいくつもの作物を育てていたが、どの年も予め決まっているか
さらに男は天候にも拒絶されているように感じることがあった。あ
それでも彼は農家という仕事をやめようとは思わなかった。
作物が大好きだったからである。
たったそれだけの理由、しかしそれ故に男は農家という仕事にやり
形こそ不揃いだが彼の作る作物はどれも美味しかったので、村の住
それもまた彼が作物をつくりつづける動機の1つだった。
ある日いつものように市場へ作物を売りに行った帰り道、顔馴染み
その商人によると、遠く離れた東の国には、どんな悪天候にも負け
また、その作物のタネが非常に不思議な形をしているそうだ。
にわかには信じがたい話だったが、商人が嘘をついているようには
数年後、彼はとある旅の途中で小さなタネを拾った。
それは今まで見たことがない、不思議な形をしたタネだった。
もしかして、かつて商人が話していたタネではないだろうか?
想像すると少し胸が踊った。
旅が終わり、故郷に帰ったらタネを育てようとおもった。
男はこれから歩む道にも、同じようなタネが落ちていないか、視線
旅を続けていくうちに、最初見かけたような、見たことがない珍し
どれも今まで見たことがない代物だった。
ところが何故だろう、初めてあのタネを拾った時のような感動は無
確かに多少の高揚感はあったが、すぐにこんなことを考えてしまっ
『もっと不思議なタネはないだろうか?』
けっきょく男は生涯をかけて特別なタネを探し続けてしまう事に気
最初に拾った不思議な形をしたタネは、すでに枯れて萎みどこにで
ある日、カバンの中に集めたタネが一杯入っていることが嫌になっ
男はカバンごと燃やしてしまった後、こう呟いた。
『私が欲しかったのは珍しいタネではなかった』
彼が欲しかったのはタネそのものではなく、タネからできる作物だった。
目的と手段を見誤ると取り返しがつかなくなる、そんな話。
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